「指名替わり」と秋の空

ホストクラブの制度として、「永久指名制度」を利用しているクラブが多いようですが、「指名ホスト」や「担当ホスト」などと呼ばれているホストなどが、あえてお休みの日を狙って、来店する女性客も多いようです。このような女性客たちは、実際には長年、担当ホストの元に通っている人たちがほとんどですが、その担当ホストに飽きてしまったので、指名替えをしたいということで、あえて「担当ホスト」がお休みの日を狙って、来店するのだそうです。実際に、永久指名制度の中では、担当ホスト以外のホストが、お客様を奪ってしまうことに対して、大きなトラブルを招いたり、ホスト同士のリンチなどといった行為が行われていたようですが、最近では、お客様のホスト代えなどといった心変わりを、配慮する中で、指名替えを認可しているホストクラブもあるようです。お客様の心変わりは、自然にあるものですから、指名替えは仕方のないことですが、できれば大きなトラブルには発展させたくないですね。

ホストの実力主義の世界

ホストの世界は完全に実力主義です。売り上げが多いホストが一番優秀と判断されます。普段の行いや、頑張りなどの他の点は評価の基準にならないのです。一般的なサラリーマンは、仕事の成果だけでなく、その結果に至るまでの過程や、頑張りなども評価の対象になっていると考えられます。また、採用や評価の際にはやる気にも注目され、やる気があれば良い印象を与えるということも少なくありません。しかし、サラリーマンのこのような評価方法は、現在徐々に崩壊しつつあるのです。以前は経済成長の時代で会社の業績も良かったので、成果を上げていない社員もやる気があれば評価することができていました。しかし、会社の業績も不振になってきつつある現代では、「やる気」や「努力」などの曖昧なものではなく、「結果」で評価せざるを得なくなってきているのです。このように結果だけが評価される成果主義は、スポーツマンにもよくみられることです。試合にて良い結果を出さなければ、スポーツマンとして評価されません。働く人々にとって、職業に関わらず成果主義にて判断されることが多くなっている時代だと考えられるでしょう。そんな中、他の職業とホストでは異なる点があります。ホストは仕事をするにあたり「倫理」や「人柄、人格」は一切関係ないということです。経営者は売り上げを伸ばせば、そのホストがどんな人格であろうと気にせずに有能ホストであると評価するのです。サラリーマンもこの関係に似た評価制度になりつつあります。会社の業績不振により、いつリストラされるかわからなくなってきてしまったのも事実です。サラリーマンたちは、リストラされないように必死で成果を出さなければなりません。成果をだすためならなんでもするというように、成果主義の現状を受け入れて、働いていかなければならないのです。

ホストたちの「心遣い」と「配慮」

ホスト達にとって、毎日の営業は、自身を指名するお客様の来店数につながると考えられています。ホストたちが、営業をかけるお客様達の中には、専業主婦がいたり、女性実業家がいたり、資産家のセレブリティ婦人がいたり、ホステス仲間がいたり、キャバ嬢がいたり、風俗嬢がいたりするものです。彼女たちの生活スケジュールは、全く異なるサイクルで生活しているので、ホスト達は、全てのお客様に一斉に営業をかけるのではなくそれぞれの生活スタイルに合った営業方法を取っているようです。 専業主婦のお客様に対しては、安易に電話をかけることで、ご主人に、気付かれてしまうこともありますので、 LINE などを通じて、ご主人の出張日や、外泊日程などをあらかじめ確認した上で、電話などこのツールを利用するなどといった配慮を行っている人たちもいるようです。実際に、このような女性たちへの配慮が行えないホストたちの数多くは、その指名客を失ってしまうというのが現実であるようです。ホストにとって何よりも大切なことは、お客様を大切にする思いやりや、配慮であるなどと、ベテランホストたちは語ります。

客と仲良くなる

お客様と仲良くなるために、友人のように会話するホストがいますが、それは誤りです。友人であれば対等ですが、ホストとお客様とは当然ながら対等ではありません。従って、おお客様を前にすると、傾聴と呼ばれる姿勢が必要になります。指名をもらってしばらく経った頃であれば、友人のように振舞うことも許されるでしょうが、最初は必ず傾聴に徹しなければなりません。つまり、相槌を打ちながら、ひたすら聞き手に回るのです。もちろんお客様に対する敬意があるからこそできる態度であり、それ故話の腰を折ったり、否定したりするのは禁物です。
確かにホストから話しかけることを望む客も多いのですが、そうした客であっても時には愚痴を聞いてもらいたかったり、沢山話してストレスを解消したかったりします。ですから客の望んでいることを敏感に察知した上で、臨機応変に対応することが求められるのです。ホストクラブは特別な場所ですから、相槌を打ちながら話を聞くだけで、数万円が飛び交います。上手く客の心理を見抜けば、そうした稼ぎ方が出来ますし、客も満足してその額を支払います。
例を挙げましょう。客が自分の不幸話を始めたとします。ホストはそれに対してどう反応すれば良いでしょうか。過去に実際にあった例ですが、あるホストは「自分なんてそれより酷い経験をしましたよ!」と自分の身の上話を始めてしまい、客を退屈させてしまいました。この種の客は話を聞いてもらえれば満足するタイプですから、ホストとしては関心を示すことのみに徹するべきです。例えば、「本当ですか?その後どうされたのですか?」などと返答すれば良いのです。

ホストとお客様の主従関係

お客様は自分の指名ホストを彼氏だと思っている、思いたいと考えている人も多いです。実際に人に会う際に私の彼氏です、とホストを紹介するお客様もいます。そのように紹介された際、ホストはどのような対応をとれば、お客様に舐められたり、後々関係がこじれたりしないのでしょうか。あるホストクラブに、後輩を数名連れてきた女性がいました。女性は指名ホストのことを自分の彼氏だと後輩に紹介しました。そのホストは特に否定はせず、後輩のお客様をヘルプのホストとともに接客し、とても盛り上がりました。そして、後輩がそれぞれヘルプホストを指名し、その日は解散となりました。解散後、そのホストとお客様はアフターに出かけたのですが、その際にホストはお客様に「自分は彼氏ではない」としっかりと否定したのです。後輩や友人の前ではしっかりとお客様の顔をたて、締めるところはしっかりと締めるというメリハリをつけることで、ホストとお客様という距離を保つことができ、お客様に、指名ホストは自分のものという勘違いをさせずに、緊張感を持たせるということができるのです。いつでもお客様の言いなりになっていると、なんでも言うことを聞いてもらえるとお客様に思われたり、後々手を焼いたりせずに関係性を保つことができるのです。また、お客様が、ヘルプホストに紹介する女性客を連れてきてくれるということはよくあります。ホストから、連れてきてほしいとお願いすることもあります。その連れてきてくれた新規のお客様のことを業界用語で「枝」と呼びます。お客様を軸にどんどん枝葉に広がっていくという考えが語源と考えられています。

ホストのノルマ

 ホストの世界にもノルマがあります。しかしノルマを達成するために焦って行動すると、失敗するのは目に見えています。客も馬鹿ではありませんから、強引に注文を取ろうとするホストに対して嫌悪感を抱きます。ホストは、客との信頼関係を軽視するようなノルマを課す店を、就職先として選択するべきではありません。一般企業であれば「ブラック」と呼ばれるようなところがそれに当たります。ではホワイト企業にあたるお店にはどのような特徴があるのでしょうか。一つは、従業員に無理をさせないところです。大手の中には、深夜営業を控えているところもあります。二つには、ブランド化されている点です。客はその店に通うだけで自慢できますし、ホストも従業員であることにプライドを持っています。ホスト一人一人の勤続年数も長い傾向にあり、風通しが良いのも特徴です。筆者の所属する店もそうですが、人件費を売り上げの50%に設定している店は、ホストの労働意欲を維持することが出来ます。50%は最低ラインですから、売れっ子になると給与の比率はさらに高くなり、モチベーションが下がることはありません。
 ホストクラブがブランド化されるのであれば、ホストも同様にブランド化され、カリスマが出現するようになります。また、カリスマホストに群がる客は質が高く、大金を支払ってくれます。

悩み相談をされるホストになる

ホストはお客様の話を聞くことが仕事です。その話をしていくうちに、愚痴や雑談ではなく、お客様の悩み相談に発展することも少なくありません。仲良くなり、信頼されると悩み相談をされることも多くなるでしょう。悩み相談をされて初めてお客様に信頼されていると考えることもできるでしょう。人気のホストはいろいろなお客様に相談を持ち込まれ、常に悩み相談を受けているなんてこともでてきます。では、どのように、悩み相談に対して答えればお客様にとってベストになるのでしょうか。それは、自分なりのアドバイスはしないということです。お客様が相談する理由は、自分が考えていることに対して賛同してほしいからなのです。新しい意見がほしいというわけではありません。相談している段階である程度の答えがお客様の中で出ていることがほとんどですので、どの答えをお客様が欲しているのか、これを見つけ出すことが悩み相談に上手く対応するコツなのです。例えば、お客様がバッグを購入しようとしており、黒にしようか赤にしようか迷っているとします。そこで、ホストに「どちらが良いと思うか」と質問してきたら、自分が良いと思う方ではなく、お客様が良いと思っている方の色を勧めます。会話の節々などからお客様の中で出ている答えを探し出すのです。その答えと別の方を答えてしまうと、お客様は不満顔になってしまうでしょう。選択は間違わないようにしなければなりません。相談に乗ることを得意としているホストによると、相談内容に親身に耳を傾けるというよりは、相槌をしっかりと打つことが、聞いてくれているとお客様が感じる方法だといいます。そして最後にお客様が欲しがっている回答を伝える。これで、お客様は自分のことをしっかりとわかってくれていると感じ、信頼度が増すと考えられるでしょう。

アップセルの効用

 ホストの接客スキルは、マーケティングの知見を活かしたものになっています。異なる商品を連続的に購入してもらうためには、最初に契約した日から時間を置かず、積極的に次の契約の話をすることが欠かせません。客の興味が薄れる前に、勝負をかけることが大切なのです。ホストの世界でもこの法則が当て嵌まります。つまり、客が来店して楽しんでいる最中に、次回の来店の話をして約束を取り付けるのです。このアップセルと呼ばれる手法によって、絶えず指名を得ることが出来るのです。
 ホストも店から出れば気を抜きたくなるものですが、最低限の注意は必要になります。というのも、店外での行動を見ている客が必ずいるからです。例えば、プライベートな時間に食事に出掛けるとしましょう。ホストが大衆食堂に入店しているのを見かけたら、客はどう思うでしょうか。大衆食堂が悪いという意味ではなく、あくまでも客の夢を壊さないために、店を選ばなければならないということです。客のタイプも様々ですが、中には生活感のあるホストに幻滅する人もいます。スーパーで買い物をしているホストを見かけただけで、その店に来なくなる人さえいます。もちろん休日にどのように過ごしても、それはホストの自由なのですが、何としても売上を伸ばしたいと考えているホストであれば、そこまで気を付けなければならないのだと留意すべきでしょう。
 投資の世界では常識ですが、リスクは分散した方が良いとされます。ホストも一握りの上客だけで稼ごうとするのではなく、多くの客の相手をした方が無難です。客の行動は気まぐれですから、いつでも特定のホストを見限るものです。上客だからといって頼りにし過ぎると、売上がある日突然激減することがあります。

好印象を与えるテクニック

 ホストもそうですが、普通の会社員でも身だしなみや服装に気を付けるはずです。それは、ルックスや言葉遣いよりも、服装や態度の方がファーストインプレッションに大きな影響を与えるからです。無精ひげの生えた営業マンは信用されないでしょうし、清潔感のない服装で近寄ってくる人は嫌われるでしょう。ホストもそうした点に気を付けています。特にホストの場合、お客様のほとんどが女性です。女性は男性よりも清潔感を重視するため、気を抜くことが出来ません。人間の評価は外観だけで決まるものではありませんが、それは長い付き合いの末に言えることであり、第一印象が悪ければ即座に関係性が断ち切られる世界では、内面よりも外見、態度が物を言うのが現実です。
 ホストのこうしたコミュニケーション術は、細かな点まで徹底されています。例えば、シャツは一回着るだけでクリーニングに出す人もいます。プロにアイロンをかけてもらうことで、常にシワやシミの無いシャツを着ることが出来るからです。スーツでさえ、細目にクリーニングに出されます。新人ホストであれば痛い出費ですが、客の印象を少しでも良くするためには、避けて通れない努力の一つなのです。
 ナンバーワンを勝ち取るホストであれば、頻繁に鏡を見て身だしなみをチェックします。もちろん体臭、口臭にも気を払いますし、消臭スプレー、うがい薬等は常備しています。ホストでなければ、ここまで客のために気を遣う人はいないだろうと考えられます。実際、美容室やアパレルショップを訪れると、清潔感のない店員さんも働いているのを見かけます。

ホストのスケジュール管理

 最近のホストはネット上のツールやスマホのアプリを上手に用いてスケジュールを管理しています。例えば一か月の予定を全て頭に入れることはできませんから、カレンダー機能の付いているツールを使って約束を忘れないように気を付けます。お薦めするのはグーグルのツールです。グーグルカレンダーは使い勝手が良く、ホストに限らず、様々な業種で使用されています。お客様の中にもグーグルのツールを使用している方がいらっしゃいますから、連絡を取る時も大変便利です。昔であれば、フィーチャーフォンのアドレス帳等に、お客様の個人情報を入力して管理するのが一般的でしたが、今ではエバーノートを使うホストが増えています。エバーノートに書き込む内容はホスト毎に異なっているでしょうが、多くのホストは客の好み、お酒に強いか弱いか、住所、趣味等を細かく書き入れています。それを上手に利用して、客とのコミュニケーションに活かすのです。
 ところでホストと言えば、イケメンというイメージを抱いている人も多いのですが、実際は俳優のように整っている人は多くありません。それでも多くのお客様が来店するのには理由があります。ホストが初めて来店した客に対して気を付けるのは、表情、言動です。ルックスの良し悪しはどうすることも出来ませんし、客も実はそこまで容姿に拘っているわけではありません。むしろどのような態度で応接してくれるのかを細かく見ています。その際、言葉遣いにも気を付けるべきでしょうが、より重要なのが身体的なメッセージなのです。